人類と植物界・動物界との調和     

 ◆指導 時岡達志
              元地球環境フロンティア研究所長
   地球は半径6378qの太陽系の中の惑星で、そこには植物、動物そして人間が住んでいる奇跡の惑星である。

これが実現したのは太陽と地球との隔たりが適当であり、現在の太陽活動の強さの下で地球表面気温が平均して15℃程度に保たれており、また水を蓄えた海を有しているからである。

更に、動物が地球上に存在できるようになったのは、地球上にまず植物が誕生し、大気中のCO2からO2を発生させたからである。地球が誕生した時点で地球大気中にはO2は存在していなかったが、植物の誕生により大気中にO2が蓄積され始め、その濃度が上昇するにつれて高度50q付近を中心としてオゾン層が形成され始めた。オゾン層は太陽光中の紫外線を吸収し、地上に届く紫外線量を低下させた。この結果、動物は海の中だけでなく地上にも住めるようになった。
   
数百万年前に誕生した人類は知識を集積し、様々な技術を考案し、一見して人間にとって便利な様々なものを作るようになった。また、医療技術も向上させ、それに伴い人間の平均寿命は延び、世界の総人口は20世紀中にはほぼ指数関数的に増大してしまった。20世紀初頭には17億人程度であったものが、100年後にはその4倍程度に増大し、その後も増大を続けている。

人間は人間の生活の便利さのために、例えば電力を社会に大量供給し、様々な高速の移動手段を駆使するようになった。そしてこれらの人間の行為は地球の大気組成を変化させるまでに大規模なものとなった。大気組成が変化すれば放射過程を通して地球の温度は変化する。その一例が大気中のCO2濃度等の増大による地球温暖化問題である。

大気組成変化によって生ずる地球の温度の変化の過程には、短時間で生じるものから数千年、あるいはそれ以上の時間スケールで生ずるものまで様々存在する。即ち現在の人類が放出しているCO2の影響は数千年先の地球環境にまで影響を与えてしまう、というやっかいなものである。我々はこのことをしっかり頭に入れておくべきである。

地球の温度変化は人類のみならず植物界にも動物界にも様々な影響を及ぼす。それら全ての影響を把握し予見することは出来ない。また、温度の上昇は現在グリーンランドと南極に存在する氷床を融解させ、海面水位を上昇させる。全てが融解すれば80m程度の海面水位上昇をもたらしてしまう。このような変化を生じさせないための最善の対応は大気組成変化をさせないことである。

これまで人類は人間活動が地球環境に及ぼす影響のことまで考慮することなく好き勝手に暮らしてきた。しかし現在、我々は産業革命以降の人間活動により大気中のCO2濃度が増加し始め、既に280ppmvから410ppmvにまで上昇してきており、地上気温も1℃以上上昇してしまっている。従って、今後人類はこれ以上地球環境を変化させないように、人間活動のすべてを見直し、必要な変更を行い、地球上で生存していくべきである。
   
この見直しの中で最重要と考えられるのが発電技術である。火力発電は勿論のこと、安全性が確実に担保されていない核分裂発電技術に代わる新たな環境と調和した安全な発電技術の開発を最優先事項として行うべきである。一つの有望な方法として、核融合発電技術開発が挙げられる。

上で述べたような技術開発により地球温暖化問題の解決を図ると同時に、我々一人一人もこの際自らの日々の暮らしぶりを振り返るべきである。世界の人口は既に74億人を超えており、一人一人の行為の74億倍が人類全体による地球環境への負荷となることをしっかり自覚し、今後の自らの暮らしぶりを律するべきである。

具体的にどのように生きるべきかは皆さんお一人お一人に考えていただきたいが、私が考える生き方は「無駄を省き、ものを大切に」するというものである。ご参考までにお示ししました。

人類はこの地球上で暮らしていますが、人類だけが存在しているのではありません。様々な植物、そして様々な動物と共存していることを忘れてはなりません。お互いに助け合い共存していくことにより、この地球環境に大きな変化を与えることなく存在していくべきであります。